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ディサイション・パワード 第9話「新型」

ノゥのあとについて、弥生とジミュートが廊下を歩いていた。
その進路の先には格納庫がある。
2人は格納庫に何かあるのか?と思いながら黙って歩く。
しかし、ノゥは格納庫を通り過ぎ、もう1つ向こうにあるロック付のドアの前に立った。
読み取り機にカードキーをスライドさせ、ドアを開けた。
ノゥはその中に入っていった。
2人もあとに続く。
そして、照明がつけられた。
そこには、赤と黒の2体のディスの様な物が立っていた。
「これは・・・?」
弥生が訊ねる。
「『フォルティッシモ』だ。人工的に生み出したディスだよ」
ノゥが説明をした。
フォルティッシモ。
一部の開発に携わった人には『フォルテ』と呼ばれていた。
ディスよりも一回り大きい。
「これを君たちに授ける。今後の要だ」
赤は弥生、黒はジミュートを与えられた。
ノゥは2人の能力をよく知っていた。
調べつくしたからだ。
だからこそ2人にこれを託す事に決めたのだった。

コレクションは補給を済ませ、廃棄基地を出港し、次の反乱軍拠点を目指した。
近況情報を入手する為だ。
パイロットのメンバーで紫郎を除いた全員が食堂にいた。
バラバラに座り、みな俯いたままチビチビと定食を食べている。
会話など1言も交わされなかった。
そこへ紫郎が食堂に来た。
静寂の食堂に紫郎は居辛い気分になった。
「あのさ、吹っ切れないのは分かるよ。前も云ったと思うけど」
「気持ち切り替えないと次撃たれるのが自分だ、だろ」
ヨーランがその聞き慣れた台詞を、紫郎が云う前に云った。
「分かってんじゃん」
紫郎はムスッとして食事を取ろうとした。

順調に航海し、拠点近海まで来ていた。
「こちら第1拠点のヨーラン・ウィリーだ。上陸許可をくれ」
ヨーランが拠点に向けて通信をした。
「照合をしています。少々お待ちを」
クルーは照合が終了するのを待った。
少しして返事が返ってきた。
「ナンバー、キーワード、組織条項を」
ヨーランは云われた事の答えを述べた。
そして、やっと上陸許可が下り、入港した。

艦からクルーの数名が降り、拠点隊長と挨拶をした。
「長旅、ご苦労でしたな」
永原とヨーランが一応これまでの報告をした。
「正規軍でないのだ、そう硬くならなくてもいい」
拠点隊長が笑いながら云った。
これからどう動くのかを両者は話し合った。
そこに、1人の兵士が走ってきた。
「た、大変です。隊長!」
かなり慌てた様子だった。
「どうした」
「敵襲です!!」
上陸早々敵が襲ってきた。
「我々を狙ってきたのでしょう。すみませんな」
「お互い様です」
永原たちは艦に戻った。

「第1戦闘配備発令。クルーは早急に持ち場につけ」
オペレーターが艦内放送で呼びかける。
ディス部隊も出撃準備に移った。
「そのディスで実戦は初めてだよな、2人とも。やれるか?」
それはリリスとフィンを指していた。
「大丈夫です」「問題ありません」
2人は答えた。
「よぉし、みんな落ちるなよ」
紫郎の気が抜けた掛け声で全機が出撃した。
前の時よりは数が減っているが、それでもまだ20機ほどいる。
その中に見たことがあるディスが1機と、見たことのない機体が2機いた。
「何だよ、あれ・・・」
自分たちのディスより一回り大きい機体に皆が驚いた。
赤と黒の機体。
それは弥生とジミュートだった。
「ヨウがいねぇってのはつまらねぇ」
ジミュートがダルそうに云った。
そして、裏切り者の艦の方へ迷わず向かった。
弥生は昔の仲間のディスを見つけ、そいつに向かっていった。
「やっぱりその機体、リリスね」
リリスは見慣れぬ機体からの声に驚愕した。
「オーシャン?!その機体・・・」
リリスはその機体の力が分からないので間合いを置き、様子見をした。
春は前に戦ったディスを見つけ、そいつに向かっていた。
ヨーランはそれに気付いた。
「あいつ、この間の」
ヨーランは迎撃を残りの4機に任せ、向かってくる敵に挑んでいった。
美衣、焔、紫郎、フィンは他の機体を迎撃していた。
紫郎はふと母艦の方を見た。
そこには、艦に向かっている敵機の姿が見えた。
「わりぃ、艦の方にお客さんだ。ここは任せたぜぃ」
紫郎は3人に任せて母艦の護衛に向かった。
この時まだ、誰もこの戦闘がどんな結果になるかなど予想もしていなかった。

ディサイション・パワード 第10話「敗戦」


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